汚れた川で酸素が減る理由:有機物の分解で酸素が使われる

水中で暮らす生き物にとって、水に溶けている酸素は大切です。けれども、その量はいつも同じではありません。

環境省の水生生物調査の解説は、水中の酸素の量と、そこで生きられる生き物の種類との関係を説明しています。

家庭などからの排水に有機物が多く含まれていると、細菌などがそれを分解する過程で酸素がたくさん使われ、水の中の酸素が少なくなることがあります。有機物には、生き物に由来するものが含まれます。

酸素が減ると生きられなくなる種類もあれば、少ない酸素でも生きられる種類もあります。有機物の分解と酸素の減少は、汚れが生き物に影響する一つの経路です。川の汚れにはさまざまな物質が関わるため、すべてを酸素不足と同じには扱えません。

汚れた川の生き物の例:赤いユスリカ幼虫は酸素と結びつく物質を持つ

少ない酸素で暮らす体の働きの一例が、ユスリカの幼虫です。ユスリカはハエの仲間で、水底で幼虫の時期を過ごすものがいます。

国立環境研究所のユスリカの解説では、赤いユスリカ幼虫が、ヘモグロビンを多く持つことが紹介されています。赤く見えるのは、この物質があるためです。

ヘモグロビンには、酸素と効率よく結びつく性質があります。この働きが、酸素の少ない水底で生きていくことにつながっています。酸素が不要になったのではなく、少ない酸素を利用する体の仕組みがあるのです。

一方、ユスリカの仲間は清流にもすみ、環境によって見られる種類が違います。「ユスリカなら、みんな同じ条件で暮らす」とは言えません。赤く見えたというだけで種類を決めたり、その川の水質を判定したりすることもできません。

幼虫が暮らす場所や巣については、泥の川底にすむドジョウやユスリカ幼虫でも紹介しています。

同じユスリカでも種類で違う:善福寺川の2種の酸素への反応

同じユスリカの仲間でも、酸素の少なさにどのくらい耐えられるかは違います。

1985年に発表された大野正彦氏の研究(PDF)では、東京都の善福寺川で採集した、次の2種の幼虫を室内で調べています。

  • セスジユスリカ(Chironomus yoshimatsui)
  • ツヤユスリカの一種(Cricotopus bicinctus)

研究では、水に溶けている酸素が少なくなったときの幼虫の反応を比較しました。その結果、調べたツヤユスリカの一種は、セスジユスリカに比べて酸素の欠乏に弱いことが分かりました。

このような、ある条件に耐えられる強さを「耐性(たいせい)」といいます。同じ仲間という大きなくくりの中にも、酸素が少ないときの反応には違いがあります。

汚い川に「耐えられる」生き物と「好む」生き物は違う

酸素の少ない水で生きられると知ると、「その虫は汚い水が好きなのかな」と思うかもしれません。けれども、酸素の欠乏に耐えたという結果だけでは、その虫がどんな場所を好むかまでは分かりません。

生きられるか、よく育つか、子孫を残しやすいか。それぞれ、確かめる内容は違います。また、酸素の少なさに強くても、別の汚染物質に強いとは限りません。「強い」と言うときには、何に対する強さなのかが大切です。

生き物を見つけたことも、その水に触れてよい根拠にはなりません。川へ出かける際は、家族で読む川遊びの安全チェックも確認してください。

汚い川の生き物についてよくある質問

ユスリカがいたら、その川は汚れているのですか?

ユスリカがいたという情報だけでは決められません。ユスリカには多くの種類があり、清流にすむ種類もいます。環境省の解説でも、一つの指標生物がすんでいることだけで、水がきれいか汚いかは決まらないと説明されています。 公表された結果を読むときの確認点は、水生生物調査の読み方で紹介しています。

酸素が少ないほど、耐性のある生き物が暮らしやすいのですか?

そうとは言えません。酸素が少なくても生きられることと、酸素が少ないほどよく育つことは別です。今回の2種の比較からも、酸素を減らすほど生き物によいとは言えません。

汚れに「強い」生き物と言う前に、種類と条件を添える

研究の例を読んだら、「ユスリカは強い」という言い方に、二つの情報を足してみてください。一つはどの種類か、もう一つは何に対する強さかです。

「この実験では、セスジユスリカは、調べたツヤユスリカの一種より、酸素の少なさに強かった」。こう言い換えると、比べた生き物と、分かった違いがはっきりします。

小さな虫の暮らしを知るときも、仲間の名前だけでなく、その体がどんな条件に対応しているのかに目を向けてみましょう。