ここでは、地域の研究や自治体の調査から、町の川のすみかを考えます。確かめるために水路へ降りたり、柵を越えたりせず、資料を読んでみましょう。川へ出かける際は家族で読む川遊びの安全チェックを確認し、増水のおそれがある日は近づきません。

コンクリートの水路で記録された魚たち

両側の壁と底の三方をコンクリートで固めた水路を、「三面水路」と呼びます。そのような水路でも、魚が確認された記録があります。

大阪府立環境農林水産総合研究所の水路整備の研究では、大阪府茨木市学園町の水路を、1999年度から2002年にかけて調べています。整備前の水路でも、オイカワやモツゴなどが見られました。

一方、この調査では、整備前にオイカワの成魚は確認されていませんでした。魚がいることと、そこで卵を産み、次の世代が育ち続けられることは同じではありません。

卵を産む場所にも魚ごとの違いがあります。川魚の産卵場所では、オイカワ・モツゴ・コイが砂利や石、水草をどう使うかを比べています。

コンクリートの壁があることと、水が壁に触れることは違う

川岸を守るために設ける壁などを「護岸(ごがん)」と呼びます。コンクリートの護岸が見えていても、流れる水が壁に直接触れているとは限りません。壁の手前に砂や小石などが積もり、そこに沿って水が流れている場合もあります。

2021年のコンクリート護岸と魚類の関係を調べた論文の抄録では、揖斐川や長良川の中流・下流に流れ込む中小河川で、次の三つの区間を比べています。

  • 両岸とも、水がコンクリート護岸に直接接する区間
  • 片岸では護岸に、もう片岸では積もった土砂に水が接する区間
  • 護岸があるかどうかにかかわらず、両岸とも土砂に沿って水が流れる区間

この研究では、主に水中を泳いで暮らす魚の種類や数は、水際が砂や石だった区間より、コンクリートに直接接した区間で少なくなっていました。一方、石のある川底を好む底生魚の数は、コンクリートに接した区間で多くなっていました。底生魚は、川底を主な生活の場所にする魚です。

また、片岸で土砂に接する区間は、両岸で土砂に接する区間と、魚の種類や数の構成が似る傾向もありました。魚の暮らし方や、川のどの区間かによって、結果は異なります。

大切なのは、護岸の見た目だけでなく、水がどこに触れて流れているかを分けて考えることです。

コンクリートの川でも、川底の形や草が生き物の居場所に関わる

水際の違いが分かると、その先の川底にも目が向きます。底は平らなのか、深さに違いがあるのか。草や物陰になる場所はあるのか。これらも魚の暮らしに関わる条件です。

先ほどの大阪の研究では、深みや隠れ場を設けるなどの整備を行い、その後の魚の利用を調べています。植物のすき間や構造物の下の空間が隠れ場所として使われ、水路の中でも魚が多く利用する場所に違いがありました。

この研究では、水位の管理なども並行して行われています。隠れ場所になる空間があっても、水位が低くて魚に使われない場合もありました。水路の形に加えて、どのくらい水があるかも関わる条件です。

同じ水路の中でも、生き物が使う場所は一様ではありません。水際の暮らしは浅い岸辺の生き物、砂の底を使う暮らしは砂の川底にいる生き物で、もう少し詳しく見られます。

町の川の生き物は、目の前の区間だけでなく川のつながりも見る

町の川を考えるときには、上流や下流、海などとのつながりも大切です。魚によっては、一つの区間だけで暮らしを終えるわけではありません。

横浜市の河川域生物相調査は、2022年度と2023年度の調査を含む長年の変化を紹介しています。市は、下水道の普及による水質の改善や、魚道の設置などによる環境の改善を挙げ、アユのように一度姿を消してから戻ってきた生き物がいると説明しています。

魚道とは、川にある段差などを魚が通り抜けるための通り道です。川と海を行き来する生き物には、ある場所のすみやすさに加えて、移動できることも関わります。横浜市の紹介では、川や海を往来する魚やエビ、カニの仲間の種類が増えてきたことにも触れています。

これも、魚道だけで生き物が戻ったという説明ではありません。水質や移動のしやすさなど、いくつもの変化を一緒に見ています。岸の材質は川を知る手掛かりの一つですが、それだけで暮らしの全体が分かるわけではないのです。

コンクリートの川の生き物についてよくある質問

岸がコンクリートなら、川底もコンクリートですか?

必ずそうとは限りません。岸の護岸と川底は分けて考えます。また、護岸の手前に土砂が積もり、実際の水際が砂や石になっている場合もあります。岸の壁が見えることだけで、底や水際の状態までは決められません。

魚がいる町の川は、水がきれいなのでしょうか?

魚がいるというだけでは、水質や人が入ってよいかは判断できません。この記事で紹介した魚の記録も、その川での生息を示すもので、水遊びや飲み水の安全を示すものではありません。水質について知りたいときは、自治体が公表する検査結果など、別の情報が必要です。

コンクリートの川の生き物は、自治体の調査で一つの区間の説明を読む

気になる町の川があれば、川の名前に「生物調査」を添えて、自治体の資料を探してみましょう。魚の一覧だけでなく、調査した区間の水際や川底の説明を一つ読んでみるのがおすすめです。

「底に砂や石がある」「岸に草が生えている」などの記述があれば、その場所を使う生き物の暮らしを考える手掛かりになります。併せて調査年と場所を確かめ、書かれていない底の状態まで想像で埋めないようにします。

コンクリートの壁の内側にも、水際や底の違いがあります。まずは一つの区間について、何が確かめられているのかを知る。そこから、見慣れた町の川の見方を広げてみてください。