川の魚はどこに卵を産む?砂利・石・水草で違う産卵場所

泳いでいる魚の姿は見えても、その卵はなかなか目に入りません。水草に付いているのでしょうか。それとも、川底の砂利の中にあるのでしょうか。
川の魚が卵を産む場所は、種類によって違います。 オイカワは砂や小石のある川底、モツゴは石や植物の茎などの硬い面、コイは岸近くの水草を使います。卵を産む場所に加えて、親がすることにも違いがあります。
目次
ここでは、研究や公的な図鑑から三つの例を見ていきます。卵を探して石を返したり、砂利を掘ったり、水草を動かしたりせず、資料から産卵の様子を知りましょう。川へ出かける際は家族で読む川遊びの安全チェックを確認し、増水のおそれがある日は近づきません。
川魚の産卵場所の例:オイカワは砂や小石のある川底
オイカワが産卵に使う場所の一つは、砂と小石がある川底です。こうした砂や石をまとめて「砂礫(されき)」と呼びます。
長野県水産試験場のオイカワ解説では、岸寄りの流れが緩い砂礫の底を選び、雄と雌の一対で産卵すると紹介されています。水が流れているだけでなく、その下がどのような底になっているかも関わるのです。
川底に産まれた卵は、表面に並んでいるとは限りません。2005年に発表されたオイカワの卵と仔魚を調べた論文の抄録には、大阪府の佐保川で、産卵中の行動や川底にある卵、その後の仔魚を調べた結果がまとめられています。
この研究では、産卵に合わせて雄がひれで川底をかき混ぜる行動や、卵が川底の中に埋まっていることが確認されました。また、卵を産んだ場所から、ふ化した仔魚が泳ぎ出る様子も調べられています。仔魚(しぎょ)は、生まれて間もない魚のことです。
こうした卵を産む川底の場所は、「産卵床(さんらんしょう)」と呼ばれます。オイカワの暮らしを知るには、泳ぐ姿だけでなく、卵や生まれたばかりの魚が使う川底にも目を向けられます。
砂の川底には、餌を探したり潜ったりして暮らす生き物もいます。産卵以外の使い方は、砂の川底にいる魚と虫の暮らしで紹介しています。
産卵場所が硬い面の川魚:モツゴは卵を産み付けて雄が守る
モツゴは、石や水草の茎などの、比較的硬いものの表面に卵を産み付けます。砂礫の中に卵が入るオイカワとは、場所の使い方が違います。
東京都島しょ農林水産総合センターのモツゴ図鑑によると、雄は産卵の前に、卵を付ける面を掃除します。その後、雌をその場所へ導き、産卵が行われます。
雄の行動は、産卵の前だけではありません。卵が産み付けられた後も、その卵を守ります。さらに別の雌を導き、その雌も同じ場所に卵を産むことがあると説明されています。
「何に卵を産むか」と「親は何をするか」を一緒に読むと、繁殖の様子が具体的に分かります。
水草に産卵する川魚:コイは岸近くの水草が多い場所を使う
コイも、水の中のものに卵を産み付ける魚です。国土交通省・太田川のコイ解説では、浅い池の岸や、川岸の水が停滞する場所などで、水中の植物が多く生えているところへ産卵すると紹介されています。
挙げられている植物は、ヨシ、マコモ、キンギョモなどです。川を泳ぐ大きなコイの姿からは気づきにくいかもしれませんが、卵を産む時期には、岸の近くにある植物も暮らしの一部になります。
モツゴもコイも植物を使いますが、モツゴの解説は茎などの硬い面への産み付けを、コイの解説は岸近くの水草が多い場所での産卵を伝えています。「水草に産む」という短い説明からも、どの部分やどんな環境を使うのか、もう一歩読み進められます。
川魚の産卵は、「どこに産む」と「どう産む」を合わせて比べる
三つの例を、卵を産む場所と、その使い方で並べてみましょう。
| 魚の例 | 産卵に使う場所やもの | 今回の資料で分かること |
|---|---|---|
| オイカワ | 砂や小石のある川底 | 佐保川の研究では、卵が川底の中にあり、その場所から仔魚が泳ぎ出ていた |
| モツゴ | 石や植物の茎など、比較的硬い面 | 雄が面を掃除し、産卵後も卵を守る |
| コイ | 岸近くなどの水草が多い場所 | 水中の植物に卵を産み付ける |
モツゴが石と植物の両方を使うように、産卵に使うものは一種類とは限りません。ほかの魚にも目を向けると、さらに違った産卵の仕方があります。
たとえば、別の記事で紹介したイタセンパラは、生きた二枚貝の体内に卵を産む魚です。ワンドの生き物と魚・貝の関係を読むと、産卵にほかの生き物が関わる例も知ることができます。
同じ川にいる魚でも、卵の時期に必要なものまで同じとは限りません。川底の砂利、石の面、水草。それぞれが、魚の繁殖とどのように関わるのかを考える入口になります。
川の魚の産卵場所についてよくある質問
魚も、産んだ卵を守るのですか?
守る魚もいます。今回紹介したモツゴでは、雄が産卵後も卵を守ります。魚の名前を調べるときは、卵を産む場所だけでなく、親の行動についての説明も読むと違いが分かります。
卵が付いている場所だけで、魚の名前が分かりますか?
この記事の比較だけでは判別できません。「石に付いているからモツゴ」とは決めず、現地で見たものの正体は保留します。産卵場所を知ることと、卵を見分けられることは別です。確認のために卵や付いているものを動かさず、図鑑などで生態を調べましょう。
図鑑で、一種類の魚の産卵場所を読んでみよう
名前を知っている川の魚を一種類選び、図鑑の「繁殖」や「産卵」の欄を開いてみてください。「砂礫底」「石の表面」「水草の茎」など、卵を産む場所やものがどう書かれているでしょうか。
場所が分かったら、「その中に卵が入るのか」「表面に産み付けるのか」と、産み方の説明も続けて読んでみます。親の行動が書かれていれば、掃除や卵の保護といった違いにも出会えます。
魚が泳ぐ場所に、卵を産むときの居場所を重ねて考える。そうすると、いつもの川底や水草が、次の世代の暮らしにつながる場所として見えてきます。



