日陰だから生き物が必ず多い、というわけではありません。川へ出かける際は家族で読む川遊びの安全チェックを確認し、日陰を安全な場所の目印にはしません。

川の日陰が生き物に与える働きを、光・水温・食べ物に分ける

「木の下に魚がいた」という話から考えられることは、一つではありません。

考えること木や日差しとの関係この記事で見る例
光水中に届く光が、藻類の育つ条件の一つになる日射と付着藻類を調べた研究
水温木が日差しを遮ることで、水温の上昇を抑える上流の川を覆う林の働き
食べ物岸の木などから落ちた昆虫が、魚の餌になる柳の下や淵で暮らすカワムツ

木が光を遮ることと、木から食べ物が入ることは、別の関係です。分けて読むと、「その生き物は、そこで何をしているのだろう」と考えやすくなります。

川の日陰は、水温の上がり方にも関わる

川を覆う枝や葉は、日差しの一部を遮ります。その働きは、水面を暗くするだけではありません。

土木研究所の「森と川のつながり(1)」では、主に上流の川について、岸の林が日差しを遮り、水温の上昇を抑える働きが説明されています。こうした林は、冷たい水を好む渓流魚の暮らしにも関わります。

「水温の上昇を抑える」というのは、水が温まりにくくなる働きのことです。暗く見える水面だけで、その場所が何度なのかは分かりません。

森林の働きには、ほかにも落ち葉を供給したり、川の中の居場所づくりに関わったりするものがあります。森と水中のつながりを広く知りたいときは、山の川の生き物と森林の関係も読んでみてください。

日陰の生き物の例:柳の下のカワムツと食べ物のつながり

木の下を使う魚の例として、カワムツが挙げられます。

大阪府立環境農林水産総合研究所のカワムツ図鑑では、柳の下や淵などの水面近くに群れで暮らし、流れてくる昆虫や、岸の木などから落ちる昆虫を食べると紹介されています。

魚の食べ物は、水中だけで生まれるものとは限りません。水面の上にある木から昆虫が落ちると、水中にいる魚がそれを食べる機会になります。枝や葉に目を向けると、魚の居場所と陸の生き物がつながってきます。

「木の下にいる魚」から、「木から落ちる昆虫を食べる魚」へ。暮らしの説明を一つ読むだけでも、同じ場所の見え方が変わります。

日なたと日陰の差は、川底の藻類にも関わる

日差しと関係する生き物は、魚だけではありません。水中の石などの表面に付いて育つ藻類は、「付着藻類(ふちゃくそうるい)」と呼ばれます。その育ち方に関わる条件の一つが、水中に届く光です。

2014年に発表された手塚さんたちの付着藻類の研究では、2012年に佐賀県の祇園川などで調査を行っています。日射の影響を比べた部分では、川に置いたコンクリートブロックに付いた藻類を調べました。

祇園川での10月の比較では、藻類の量を表す目安が、日陰より日なたで高い値でした。使われた目安は「クロロフィルa」という色素の量です。研究では、光が少ないことが、日陰で藻類の成長を抑えた可能性があると考えられています。

これは、その川で人工のブロックを使って調べた結果です。藻類の育ち方には水の流れや栄養なども関わるため、川にある石がどれも同じようになるとは限りません。それでも、水中の生き物を考えるときに、上から届く光も大切な条件になることが分かります。

川の日陰と生き物についてよくある質問

日陰のほうが、魚はたくさんいるのですか?

一律には言えません。今回のカワムツの解説も、日陰と日なたで魚の数を比べたものではありません。どんな魚が、その場所の何を使って暮らすのかを知ると、数の多い・少ないだけでは分からない関係に気づけます。

自分たちで二つの場所を見比べたいときは、観察する時間や見える範囲を考える方法を参考にしてください。場所の特徴だけでなく、見ていた条件も一緒に考えられます。

橋の下の日陰も、木陰と同じですか?

日差しを遮るという点は共通します。ただし、木から昆虫が落ちるような食べ物とのつながりまで、同じとは限りません。日陰を作っているものと、そこに暮らす生き物を合わせて考えると、暗さ以外の違いにも目を向けられます。

日陰の生き物の「木の下にいる」の続きを読んでみよう

今回紹介したカワムツの解説を、もう一度読んでみてください。「柳の下」という居場所の情報に続いて、どこから来た昆虫を食べると書かれているでしょうか。

食べ物の説明が見つかったら、「木から昆虫が落ち、魚の餌になる」と、木と魚のつながりを一文にしてみます。木が日差しを遮って水温の上昇を抑える話とは、違うつながりだと分かります。

川に落ちる一つの影にも、光、水温、食べ物という違う関係があります。生き物の居場所を調べるときは、「どこにいる」の続きを読むと、そこでの暮らしが少しずつ見えてきます。