卵は、母親のお腹側に抱えられている

サワガニのメスは、産んだ卵を腹部に抱えて守ります。ここでいう「お腹」は、体の内側にある袋ではなく、甲羅の下に折りたたまれた腹部の側です。卵を体内で育てて産む、という意味ではありません。多くの川魚が砂利や石のすき間に卵を産むのとは、守り方が違います。魚の産卵場所は、川の魚はどこに卵を産む?で見られます。

TAKAO 599 MUSEUMのサワガニの解説にも、メスが腹部に卵を抱え、子ガニが孵化するまで保護することが記されています。卵がかえることを「孵化(ふか)」といいます。

上から甲羅を眺めただけでは、その下の卵が見えないこともあります。卵を探すためにカニを裏返したり、腹部をめくったりする必要はありません。腹側の様子は、水族館や博物館の写真で確かめられます。水族館で水槽のどこを見ると面白いかは、淡水魚の水族館を親子で楽しむにまとめています。

卵から出てくるとき、すでに小さなカニの姿

母親が抱える卵、小さなカニとして孵化して腹部にとどまる時期、母親から離れて暮らす時期の三段階
育ち方の順番を示した概念図です。卵と子ガニだけを描いており、個数、大きさ、段階ごとの日数を表してはいません。

サワガニは卵の中で発育し、親に似た小さなカニの姿でかえります。この小さなカニを「稚ガニ(ちがに)」と呼びます。孵化してから水中を漂う幼生の時期を送る多くのカニとは、育ち方が違います。

箱根町の生きもの図鑑でも、サワガニは卵から稚ガニで生まれ、しばらく母親の腹部で保護されると説明されています。

「川で見つけたカニなら、みんな同じ育ち方」とは限りません。ここで扱っているのはサワガニです。見つけた個体の種類がまだ分からないときは、「小さなカニを見た」という観察と、「サワガニについて調べたこと」を分けておきます。

かえったあとも、すぐには母親から離れない

卵からかえることと、母親から離れることは、同じ瞬間ではありません。孵化後の子ガニは、しばらく母親の腹部にしがみついて過ごします。その後、母親から離れ、一匹ずつの生活を始めます。

海遊館のサワガニの繁殖記録には、卵を抱える母親、腹部にとどまる子ガニ、その後に離れて暮らす様子が紹介されています。親と同じ形になったらすぐ独立する、というわけではないのです。

この過程を確かめるために、母親を振ったり、子ガニを引き離したりしないでください。資料の写真を順に見るだけでも、「卵の中」「かえったあと」「離れたあと」の違いを追えます。

見えたことと、調べたことを分けて残す

野外では、卵も子ガニもいつでも見えるわけではありません。見えなかった部分を無理に確かめず、写真や図鑑で分かったことを別に書くと、観察の記録が正確になります。

場面分かること決めつけないこと
母親が卵を抱える資料写真卵が腹側にある上から卵が見えない個体に、卵がないとは限らない
孵化後の子ガニの資料写真小さなカニの姿で、母親のそばにいるすでに母親から離れて暮らしているとは限らない
川辺で小さなカニを見た見えた形、場所、歩き方大きさだけで、孵化した日や親子関係を決めない

メモを残すときは、三つに分けると読み返しやすくなります。

  • 自分で見た姿や場所を書く。
  • 写真や図鑑で調べた育ち方を、資料名と一緒に書く。
  • 見えなかった卵や、分からない種類は「不明」のまま残す。

現地での見方や石を動かさない工夫は、サワガニらしき生き物を観察するときの注意で確認できます。

サワガニの赤ちゃんについて、よくある質問

サワガニは、母親の体の中から生まれるのですか?

母親が体の外側、腹部に抱えた卵からかえります。孵化後も子ガニが腹部にとどまるため、親のお腹から出てくるように見えることがありますが、体内で子を育てて産むわけではありません。

小さなカニが近くにいたら、親子ですか?

近くにいるというだけでは判断できません。孵化後に母親の腹部にとどまる時期はありますが、野外で別々に歩く個体の関係を、位置や大きさだけで決めることはできません。

小さな姿の前にあった時間を考える

小さなサワガニにも、母親が卵を守り、かえったあともしばらく一緒に過ごした時間があります。見えている姿の前後を知ると、川辺の一匹から考えられることが広がります。小さなカニが大きくなるときに硬い殻を脱ぐ仕組みは、同じ甲殻類のザリガニを例にしたザリガニはなぜ脱皮する?硬い殻と成長の仕組みで読めます。

観察メモには、見えた姿を一つ描き、その横に調べた育ち方を添えてみてください。目の前で確かめられなかったことも、資料を読んでつなげていけます。