川の深いところ「淵」は、川底の低くなった部分にもできる

水面だけを見ると、川は一枚の帯のように見えます。でも、その下の川底には高いところと低いところがあります。

たとえば川の曲がりでは、水の流れによって岸や底が削られ、深い部分ができます。淵ができる形はこれだけではありませんが、川底の凹凸を思い浮かべると、浅い瀬と深い淵がつながっている様子を考えやすくなります。

瀬と淵の断面模式図。水面の下の川底が浅い部分から低くなり、深い淵につながっている図を大きく開く

図は深浅の関係を示す模式図です。実在の場所や縮尺を表しておらず、現地で深さを推測するための図ではありません。

国土技術政策総合研究所の瀬・淵の説明では、淵は魚の休息や逃げ場所にもなり、コイやナマズなどのすみかにもなると紹介されています。

なお、水の色や水面の静けさだけでは、水深や水中の流れは分かりません。底を見ようと岸から身を乗り出したり、深みへ入ったりせず、利用できる遊歩道などから見える範囲で眺めましょう。出かける前には川遊びの安全チェックを確認し、増水のおそれや雷があるときは川へ近づきません。

川の深いところにいる魚にとって、淵は「休む場所」だけではない

流れの緩い淵を、魚の休憩所と考えるとイメージしやすいですね。ただ、それだけで魚の一日を説明することはできません。

富山県の庄川では、浅瀬に人の手でつくった淵を調べた研究があります。夏の調査で、夜にはアユ・ウグイ・ヌマチチブが瀬より淵を利用する傾向が見られました。一方、カジカは反対に、淵より瀬を好む傾向でした。

同じ場所で調べても、魚の種類によって違いがあるのです。その研究では、淵は稚魚が育つ場になり、流量などの条件が合えばアユが食べ物をとる場にもなると考えられています。

この例は、1995年・1996年の8〜9月に行われた庄川の造成淵の調査によるものです。全国の魚が同じ動きをするという意味でも、夜の川へ観察に行く勧めでもありません。

「瀬では食事、淵では睡眠」ときっぱり分けず、魚ごとに場所の使い方があると覚えておきましょう。昼間に魚が見えなくても、別の時間には、その淵を利用している可能性があります。

川の深いところの底にも、小さな生き物のすみかがある

淵を泳ぐ魚のことが分かったら、さらに下の川底を考えてみます。

山の森を流れる渓流では、岸の木から落ちてきた葉が淵に沈み、たまることがあります。水があるだけでなく、底の土や落ち葉も、生き物が暮らす場所の一部です。

虫の例淵での暮らし方
モンカゲロウの仲間の幼虫川底に浅いトンネルを掘り、その中で暮らす。細長い体と、掘るのに向いた前脚を持つ
カクツツトビケラの仲間の幼虫落ち葉を使って筒のような巣をつくり、その中に入って落ち葉だまりを移動する

ここで挙げたのは、森林総合研究所が紹介する山林の渓流の例です。どこの淵にもこの二つの仲間がいるわけではありません。

「淵にすむ虫」とひとまとめにしても、土を掘るものと、落ち葉を使って巣をつくるものでは暮らし方が違います。落ち葉が川虫の食べ物や巣の材料になる話では、一枚の葉の二つの使われ方を紹介しています。図鑑を見るときは、名前の横にある「すむ場所」と、体や巣の形を一緒に見てみてください。底が見えない川でも、その下の暮らしを考える手がかりになります。

深いところの生き物は、地域の資料と図鑑を組み合わせて知る

淵の底の暮らしを知るために、実際に底へ手を伸ばしたり、泥や落ち葉をすくったりする必要はありません。

まず、川の名前と「魚類」「水生昆虫」などを組み合わせて、河川事務所や自治体、博物館が公開している資料を探してみましょう。見つかった記録では、調べた区間と季節にも目を向けます。上流で見つかった生き物が、いつでも下流にいるとは限らないためです。季節による暮らしの違いは、冬の川で魚や虫が過ごす場所と成長の例でも紹介しています。

次に図鑑で、気になった一種類の姿とすみかを確かめます。資料に記録があっても「今日ここにいる」とまでは言えませんが、名前だけの一覧が、川の景色と結びついてきます。

家や図書館に図鑑があれば、まずはそれで十分です。魚の姿も調べたくなったら、川の小魚を形や模様から調べる方法も参考にしてください。

川の深いところの生き物についてよくある質問

深いところには、大きな魚だけがいるのですか?

大きな魚だけではありません。淵は小さな魚が育つ場所になることもあり、底や落ち葉には水生昆虫も暮らします。生き物の種類と成長段階、川の条件を合わせて考えます。

水面が静かなら、底までのぞけますか?

静かな水面から深さや水中の流れは判断できません。底を見るために岸から身を乗り出したり、水に入ったりしないでください。見えない部分は資料や図鑑で調べる楽しみ方があります。

魚が見えない淵には、何もいないのでしょうか?

見えないだけでは、生き物がいないとは判断できません。魚が場所を使う時間は種類によって違い、底や落ち葉の中で暮らす虫もいます。見えた範囲と、まだ分からない範囲を分けておきましょう。

川の深いところの静かな水面の下に、どんな暮らしがある?

川の深いところには、泳ぐ魚だけでなく、川底を掘る虫や落ち葉を使う虫の暮らしもあります。水面から全部を見通せなくても、体の形やすみかを知れば、川を見る楽しみは広がります。

「深い川にいる」から一歩進んで、底にいるのか、岩陰にいるのかまで分かると、見えなかった水中が少し身近になります。

流れの速い場所の虫も気になったら、瀬で暮らす虫の体と巣のしくみへ。淵の虫と、すみかの使い方を見比べられます。