ここでは、地域の研究や公的な解説から、三つの例を見てみます。魚のいる場所を探して水際の草の下をのぞいたり、川に入ったりせず、資料から暮らしを知りましょう。川へ出かける場合の確認は家族で読む川遊びの安全チェックへ。増水のおそれがある日は近づきません。

冬の川の魚はどこにいる?サクラマス幼魚が使っていた場所

北海道の積丹川では、1995年と1996年に、冬のサクラマスの幼魚が使う場所が調べられました。幼魚とは、まだ成魚になる前の若い魚のことです。

サクラマス幼魚の越冬場所を調べた論文の抄録によると、幼魚は岸寄りの流れの緩い場所で、雪に押された植物の覆いの下に多く見られました。枝や岸辺の植物がつくる覆いと、流れの緩さが、冬の居場所に関わっていたのです。

この研究では、一定の深さを好む傾向は見られませんでした。深さだけを手掛かりにすると、この川で幼魚が使っていた環境を捉えきれないのですね。

さらに、胃の中には少量の小さな水生昆虫がありました。冬でも、何も食べずに過ごしていたわけではありません。

深い淵の生き物の暮らしを知るときも、魚の種類や成長段階、季節を一緒に考えることが大切です。

冬の川虫はどこで育つ?奥日光で調べられたカゲロウの幼虫

魚の次は、川虫の冬を見てみましょう。水の中には、冬にも成長する幼虫の例があります。

国立環境研究所の「奥日光外山沢川の水生昆虫」は、1990年6月に発行された研究紹介です。奥日光の外山沢川で、トゲマダラカゲロウなどの暮らしを調べています。

当時の調査では、源流から中流にかけて湧き水が入り、冬は上流のほうが下流より水温が高くなっていました。トゲマダラカゲロウの幼虫は、冬の間、その比較的暖かい上流で成長していたと報告されています。

同じ冬でも、川の中の水温がどこも同じとは限らないのですね。この川では、湧き水が入ることと、冬の水温の違いが関わっていました。

冬の川で成虫になる生き物:キソガワフユユスリカ

冬を幼虫として過ごす虫がいる一方で、冬に成虫になる虫もいます。その一例が、キソガワフユユスリカです。

国土交通省の木曽川のユスリカ解説では、キソガワフユユスリカが冬に川から羽化して成虫になると紹介されています。羽化とは、さなぎなどから成虫になる変化のことです。

この虫は、暖かい時期には幼虫が繭をつくり、川底で夏眠します。冬を休んで過ごすのではなく、暖かい時期を繭の中で過ごし、寒い季節に成虫が現れるという一年の過ごし方なのです。

「虫が飛ぶ季節は夏」と思っていると、少し意外かもしれません。この虫にとっては、冬が成虫になる季節なのですね。

冬の川の生き物は、名前と成長段階を一緒に見る

三つの例を並べると、冬の川にも違う過ごし方があると分かります。

研究・解説の例注目した冬の姿
積丹川のサクラマス幼魚緩い流れと植物の覆いを利用し、少量の餌も食べていた
奥日光外山沢川のトゲマダラカゲロウ幼虫が、冬に比較的暖かい上流で成長していた
木曽川のキソガワフユユスリカ冬に羽化して成虫になる

冬を過ごすことを「越冬」と呼びますが、それはすべての生き物が同じように眠るという意味ではありません。魚なら幼魚なのか、昆虫なら幼虫なのか成虫なのか。その段階まで添えると、冬の姿を具体的に考えられます。

図鑑や地域の解説を読むときも、「冬はどうしている?」という問いに加えて、種類と成長段階を確かめてみましょう。研究された川や時期が書いてあれば、その条件も一緒に読みます。今回の例も、それぞれの川や時期についての記録です。ほかの魚やユスリカにも同じ過ごし方が当てはまるわけではなく、今どこで見られるかを示すものでもありません。

冬の川の生き物についてよくある質問

冬の魚は、餌をまったく食べないのですか?

一律には言えません。この記事で紹介した積丹川のサクラマス幼魚は、少量の水生昆虫を食べていました。魚の種類や環境で違うため、この結果をほかの魚の食事量や、飼育魚への給餌方法にそのまま使うことはできません。

川の虫は、みんな幼虫の姿で冬を越しますか?

みな同じではありません。キソガワフユユスリカのように、冬に成虫になる例もあります。「川の虫」とひとまとめにせず、調べたい種類の一年の過ごし方を確認してください。

同じ種類なら、どの川でも冬の過ごし方は同じですか?

種類名だけでは決まりません。川の水温や流れなどの条件も関わります。別の地域の研究を読んだときは、そこで確かめられたこととして受け止め、近くの川でも同じ場所にいる、同じ時期に成虫になるとは決めないようにしましょう。

冬の川の生き物を調べるなら、気になる一種類の「冬の姿」を確かめる

静かに見える冬の川でも、魚が少しずつ餌を食べ、幼虫が育ち、成虫になる虫がいます。冬の暮らしを知る入口は、その生き物の名前と、冬にどんな段階で過ごすのかを組み合わせることです。

気になる川の生き物を一種類選び、図鑑や博物館などの解説で、冬の過ごし方を確かめてみてください。その説明が幼魚・幼虫・成虫など、どの段階について書かれているかにも目を向けると、名前だけを知っていた生き物にも、季節を通した暮らしが見えてきます。

川虫が何を食べて育つのか気になったら、落ち葉を食べたり巣に使ったりする川虫の暮らしも読めます。季節と居場所を一緒に見渡すなら、川の生き物が使う場所の全体像からたどってみましょう。