川の食物連鎖の図の矢印は「食べ物から、食べる生き物へ」

食べ物のつながりを表す図では、まず矢印の意味を確かめます。下の図は、食べられるものから、それを食べる生き物へ矢印が向いています。

たとえば「落ち葉→水生昆虫」は、虫が落ち葉を食べるという関係です。落ち葉が虫に育つという意味でも、虫が移動する方向でもありません。

北海道立総合研究機構の『森と川と海の生き物たちのつながり』(PDF)には、渓流の食物関係を示した模式図があります。次の図は、そのうちの一部を取り出し、食べ方によってまとめ直したものです。

落ち葉・藻類から水生昆虫を経て魚へ届く道と、川へ落ちた陸生昆虫から魚へ届く道を示した模式図図を大きく開く
道総研の解説にある食物関係の一部を、独自の配置で整理した模式図です。矢印は食べ物から食べる側へ向き、食べる量を表すものではありません。

図の「細かな有機物」には、葉などが細かくなったものが含まれます。「水生昆虫」には、カゲロウやトビケラのように、水中で幼虫時代を過ごす虫も含まれます。

これは関係を考えるための一般的な模式図です。特定の川で、すべての関係を調べた結果を示すものではありません。

川の食物連鎖で魚へ届く道は、途中で分かれたり合わさったりする

図の上から、落ち葉や藻類を食べる水生昆虫まで進んでみます。そこからは、矢印が二方向へ分かれています。

一方は、昆虫を食べる魚へ直接つながります。もう一方は、ほかの昆虫を食べる水生昆虫へ進み、そこから魚へつながります。同じ水生昆虫を出発点にしても、図の中で魚までたどる道は一つではありません。

右側には、川へ落ちた陸生昆虫から魚へ向かう矢印もあります。水中で育った虫だけでなく、陸で暮らしていた虫も食べ物になります。

魚のところで合わさる矢印を見てみると、川の中と外から、違う道を通って食べ物が届くことが分かります。「魚は虫を食べる」の先に、その虫はどこで暮らし、何を食べていたのだろうという問いが生まれます。

食物連鎖の「川虫」の箱の中でも、食べ物は同じではない

図では読みやすくするために、葉や藻などを食べる水生昆虫を一つの箱にまとめています。この箱に入る虫が、全種類とも葉と藻の両方を食べる、という意味ではありません。

森林総合研究所の川虫の解説には、落ち葉を食べるカクツツトビケラの仲間、石の表面の小さな藻類などを食べるヒラタカゲロウの仲間が登場します。また、シマトビケラの仲間は、流れてきた落ち葉や藻類のかけらを食べると紹介されています。

同じ「川虫」でも食べ物は違い、複数の食べ物を利用する仲間もいます。図の箱は、種類ごとの細かな違いを省いて、つながりを見やすくしたものです。

落ち葉を使う暮らしが気になったら、葉を食べたり、巣に使ったりする虫へ進めます。食べ物としての関係と、巣の材料としての利用は、別の関わりです。

川の魚は、同じ魚でも育つと食べ物が変わる

魚の名前が同じでも、生涯ずっと同じものを食べるとは限りません。

別の例として、太田川河川事務所のアユ解説では、小さな仔魚・稚魚の時期には動物プランクトンを食べ、成長すると石などに付いた藻類を食べるようになると説明しています。上の図は昆虫を食べる魚につながる関係を選んだもので、魚の食事のすべてを表してはいません。

アユの成長や口の働きについては、石の表面の藻と生き物の食事で紹介しています。食べ物を調べるときは、名前と一緒に「どの成長段階の話か」も確かめると、図から省かれている違いを知ることができます。

川の生き物の食物連鎖・食物網についてよくある質問

矢印が多く集まるところには、生き物がたくさんいるのですか?

この図の矢印は、食べ物の関係を示しています。本数から個体数は分からず、線の太さも食べる量や重要さを表していません。量を比べるには、図の関係とは別に調べた情報が必要です。

近所の川にも、この図をそのまま当てはめられますか?

この図は、関係の一部を整理したものです。どんな生き物がいて、何を食べているかは、場所や時期、成長段階によって違います。近所の川で魚と虫を見かけても、その組合せで実際に食べたと確認したことにはなりません。

川の食物連鎖は、川の中からと陸からの二つの道をたどる

もう一度、図の「昆虫を食べる魚」を見てみてください。そこへ届く道を、川の中の水生昆虫からと、川へ落ちた陸生昆虫からの二通りでたどってみましょう。

水生昆虫の道をさらにさかのぼると、落ち葉や藻類にもつながります。魚の食べ物を考えることは、目の前の魚だけでなく、水中の小さな生き物や、川の周りの暮らしへ目を向けることでもあります。