川の水たまりに魚がいる理由:以前、水でつながったときに入った可能性

熊本県の菊池川を対象にした2016年発表のワンド・たまりの研究では、ふだんの水位のときに主な流れとつながっていない水域を「たまり」として区分しています。こうしたたまりでも、魚の生息が確認されました。

ふだんは水面が離れていても、水が増えて周囲まで水につかると、ほかの水域とつながることがあります。その間に魚が入ったり、流れ込んだりして、水位が下がった後に残る可能性があります。

菊池川の研究では、確認されたタナゴ類について、出水などで支流や用水路から流れ下ってきた可能性が考えられています。これは生息状況などをもとにした考察で、一匹ずつ移動を追跡して確かめた結果ではありません。

河原の水域が本流とつながる状態と、水位低下後に離れる状態を上下に示した模式図図を大きく開く

河原の水域が本流から離れる一例を示した模式図です。実際の地形や、個々の生き物が移動した経路を示すものではありません。

水がつながっている入り江状の場所については、川のワンドと本流の関係で紹介しています。水面の形に加えて、「いつ、どうつながっていたか」が生き物の来た経路を考える手掛かりになります。

川の流れが途切れて水の残る淵に、生き物が残る場合

河原にあるたまりとは別に、川の流れそのものが途切れて、水の残る場所が生じることもあります。

川を流れる水が減ると、浅い瀬が干上がり、流れが途中で途切れる「瀬切れ(せぎれ)」が起こることがあります。そのとき、周りより深い淵には水が残る場合があります。

土木研究所の瀬切れの実験報告(PDF)では、2022年7月、実験河川の水量を減らして、生き物の変化を調べました。

魚については、一匹ずつ移動を追うのではなく、水に含まれる魚由来のDNAを調べています。この「環境DNA」の変化から、瀬切れの間、魚が水の残る淵を利用していたと推定されました。

一方、水生昆虫は直接採集して調べています。瀬を主なすみかにする虫では、魚と同じように淵へ移ったとは言えず、淵で数が増えることはありませんでした。

さらに、この実験では、瀬切れが長引くにつれて、魚や水生昆虫の生息量が大きく減ったと考えられています。残った淵では、水温が上がったり、水に溶けている酸素が少なくなったりしていました。水が残る場所を利用できても、そこでずっと暮らせるとは限らないのです。

水たまりの虫は、成虫が飛んできて卵を産むこともある

水中にいる虫を見て、「幼虫が川から移ってきた」と考える前に、成虫の姿も思い浮かべてみましょう。

たとえばユスリカの仲間には、水中で幼虫の時期を過ごし、成虫になると飛ぶものがいます。国立環境研究所のユスリカの生活史の解説では、卵が水面や水草などに産み付けられ、孵化した幼虫が水底で暮らすことが説明されています。

水面どうしが離れていても、飛ぶ成虫には空中を通る経路があります。水域の条件がその種類に合い、そこで産卵・成長すれば、後から幼虫が見られるようになる可能性があります。

どんな水域に、どのように卵を産むかは、虫の種類によって違います。幼虫がいる場所を考えるときは、成虫の暮らしも手掛かりになります。

川の水たまりの生き物についてよくある質問

魚がいれば、以前は本流とつながっていたと断定できますか?

魚が入った経路の候補にはなりますが、魚がいるという事実だけでは断定できません。以前の水位や周りの水域との関係なども分からなければ、その魚の来歴は決められません。

水が残っていれば、生き物はずっとすめるのでしょうか?

そうとは限りません。土木研究所の実験では、水の残る淵でも水温や酸素の状態が変わり、瀬切れが長引くと生息量が減ったと考えられています。水があるかどうかに加えて、そこで暮らせる条件が続くかも関わります。

生き物の経路を確かめるために、増減水中の川へ近づかないでください。魚を別の水域へ移す、水を足す、水路を掘ってつなぐといったこともせず、資料から変化を知ってみましょう。川へ出かける際は家族で読む川遊びの安全チェックを確認してください。

水たまりの生き物の来た道:水を通る経路と空を飛ぶ経路を分ける

記事の図で、河原の水域と本流がつながっている状態を探してみてください。魚が水の中を通って入る可能性を考えるなら、離れた後の水面だけでなく、つながっていたときの様子が大切です。

その次に、成虫が飛ぶユスリカを思い浮かべます。こちらは、水面が離れていても、飛んで産卵するという別の経路を考えられます。

同じ水たまりにいるように見えても、魚と虫で来た道が同じとは限りません。「今、水がつながっているか」から「いつ、どんな姿で来た可能性があるか」へ広げると、水たまりの見方が変わります。