川の魚はなぜ上流を向く?その場にいる魚と遡る魚の違い

魚は上流へ頭を向けているのに、同じ石の横からなかなか動かない。水は流れているのに、魚だけが止まって見えることがあります。
そんなときは、「どちらを向いているか」に加えて、「岸から見て、どこにいるか」に注目してみましょう。
川の魚には、水が来る側へ頭を向け、泳ぎ方や姿勢を調整して同じ場所を保つものがいます。 頭が上流向きでも、その魚が上流へ進んでいるとは限りません。岸の目印と魚の位置を、時間をおいて比べると、向きと移動を分けて考えられます。
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川の魚が上流を向くと、水は流れても魚の位置は変わらない
水が左から右へ流れている場面を考えてみます。魚の頭が左を向いていれば、水が来る側へ頭を向けていることになります。
次の図では、上がはじめの場面、下が少し後の場面です。岸の目印と魚の位置を見比べてみてください。
頭は水が来る側を向いたまま、岸の目印から見た位置も同じです。この二つの場面では、魚が上流へ進んだとは言えません。
魚が流れに逆らう向きに泳ぐことで、下流へ流されず、その場所を保てる場合があります。水に対して泳いでいる魚でも、岸からは止まって見えるのです。
上流を向く魚の動き:場所を保つ「定位」と川をさかのぼる「遡上」
農村工学研究所の2009年の研究報告(PDF)では、魚が上流側へ頭を向け、ある場所にとどまることを「定位(ていい)」と呼んでいます。一方、流れをさかのぼって上流へ進むことは「遡上(そじょう)」です。
この報告には、2004年に屋内の魚道(ぎょどう)模型で行われたウグイの実験がまとめられています。魚道は、魚が川の堰(せき)などを越えて進めるように設けられる通り道です。
実験では、流れの比較的弱い場所で定位していたウグイが、そこから移動して、上流側へさかのぼる姿が観察されました。同じ魚にも、場所を保っている時間と、その場所から先へ進む動きがあるのです。
魚が向いている側だけを見ていると、この違いを見落とします。「さっきと同じ場所にいるか」「岸や石から見た位置が変わったか」と考えると、動きの説明が変わります。
上流を向く魚は、尾びれを振らず姿勢を調整していることもある
その場を保つ魚が、いつも尾びれを振り続けているとは限りません。
北海道大学が2024年に公表した研究解説(PDF)では、ウグイと、海の魚であるマアジを使い、尾びれを振らずに位置を保つ行動を調べています。水を循環させる「回流水槽」の中に、翼の形をした模型を置いて行った実験です。
魚は模型の近くで、周囲の水の流れに応じて姿勢を調整していました。尾びれを振らない間にも、胸びれを片方だけ開いたり、体の曲がり方を変えたりする動きが確認されています。
魚の周りの流れと、魚自身の姿勢の調整が関わって、位置を保っていたのです。尾びれの動きだけでは、姿勢を保つための調整までは分かりません。
これは模型のある水槽で調べた例で、川で止まって見える魚すべてが同じ仕組みを使うと分かったわけではありません。それでも、尾びれが動かない姿の中に、体勢を保つ調整があることを教えてくれます。
川では魚を追って水に入ったり、流れを変えて反応を確かめたりせず、利用できることを確認した岸の観察場所から眺めましょう。出かける際は家族で読む川遊びの安全チェックを確認してください。
川の魚が上流を向くことについてよくある質問
川の魚は、いつも上流を向いているのですか?
魚の向きや行動は、種類や状況によって違います。また、実際の川では、魚のいる場所の流れが、川全体の上流から下流への方向と同じとは限りません。図は、一方向の流れに頭を向けて場所を保つ場合を表しています。
同じ場所にいる魚は、休んでいるのですか?
その姿だけでは決まりません。流れの中で泳いだり姿勢を調整したりして、位置を保っている場合もあります。尾びれが動いていないように見えることだけで、眠っているとも判断できません。
上流を向く魚を観察するなら、岸の目印を先に見つける
もう一度、上下の図で岸の目印を探してみてください。目印のそばの魚は、少し後に位置が変わっているでしょうか。
この図では、頭は左向きで、目印から見た位置は変わっていません。「頭の向き」と「位置が変わったかどうか」を、それぞれ一つずつ確かめてみましょう。
何匹かが一緒に動く姿も気になったら、小魚が群れる背景と、仲間との動きへ。今度は、一匹の位置から魚同士の関係へ目を向けられます。


