草を抜いたり根元を動かしたりせず、植物もすみかの一部として残しておきましょう。川へ出かける際の確認は、家族で読む川遊びの安全チェックにまとめています。

川の水草は、水面より上の草と水中の茎や葉で生き物の使い方が違う

川には、水中に茎や葉が広がる植物も、水際に生えて葉が水面へ垂れる植物もあります。葉が水の上に出ていても、茎の下のほうは水中にあることがあります。

生き物との関係を考えるときは、「草が生えている」から一歩進んで、植物のどの部分が水中にあるのかに目を向けられます。水面を覆う葉と、水中に伸びた茎では、生き物が触れられる場所も違うからです。

土木研究所の水際域の研究紹介でも、水際の植物を水面より上の部分と、水面より下の部分に分けて調べています。その実験では、水中の植物が魚の生息に関わり、水際の流れを弱める働きが主な要因と考えられました。

植物は、葉の陰を作るだけでなく、水中の環境にも関わっています。流れと小魚の居場所については、川の浅い岸辺の生き物で詳しく紹介しています。

水中にある茎や葉は、虫がつかまる場所にもなります。

川の水草で暮らす生き物:ハグロトンボの幼虫は水草につかまる

トンボの幼虫は「ヤゴ」と呼ばれます。空を飛ぶ成虫とは違い、幼虫の時期は水の中で生活します。

農林水産省の流水性トンボ類の解説(PDF)では、川や水路にすむ幼虫の例として、ハグロトンボを紹介しています。ハグロトンボの幼虫は、水草につかまって暮らします。

水草は、幼虫が体を支えるためにつかまる場所になります。

同じ資料には、砂や泥に潜って暮らすオニヤンマの幼虫も載っています。どちらもトンボの幼虫ですが、使う場所が違います。水草につかまるという暮らし方は、すべてのヤゴに共通するわけではありません。

成虫になると、暮らしの舞台は水中から周りの樹林や草地などへ移ります。水の中の植物と、岸の上に広がる植物。同じトンボでも、成長の段階によって関わる場所が変わるのです。

ヤゴらしい姿を見たときの形や動きの手掛かりは、川でのヤゴの観察を参考にしてください。水草にいたという情報だけで、トンボの種類が決まるわけではありません。

川の水草の多い場所には、ヌマエビ類もすむ

植物のある環境を使うのは、虫だけではありません。埼玉県のヌマエビ類の紹介には、流れの緩やかな川や、水草の多い場所に生息すると書かれています。

エビらしい小さな姿が見えたときも、植物の名前だけで種類を決めることはできません。触角や体形、動きに興味が向いたら、川エビらしき生き物の観察の手掛かりへ進んでみましょう。

水草の茎の表面が、魚の卵を付ける場所になることも

生き物が植物を使うのは、普段の暮らしのときだけではありません。繁殖の時期に関わる例もあります。

たとえばモツゴは、水草の茎などの比較的硬い面に卵を産み付ける魚です。幼虫がつかまるハグロトンボと違い、ここでは植物の表面が、卵を付ける場所になります。親魚の行動やほかの魚との違いは、川の魚の産卵場所で紹介しています。

つかまる、周りで暮らす、卵を付ける。植物と生き物の関係を、こうした動きや使い方で読むと、「水草がある」という景色が少し細かく見えてきます。

川の水草と生き物についてよくある質問

水草が多ければ、生き物も必ずたくさんいるのですか?

水草があることだけでは、種類や数までは分かりません。水中の植物には魚のすみかに関わる働きがあり、植物につかまって暮らす虫もいますが、どの生き物がいるかは、その川の環境も含めて考える必要があります。

水面より上にある草は、水中の生き物と関係がないのですか?

関係がないとは言えません。葉が水面より上に出ていても、茎などが水中にある場合があります。また、ハグロトンボのように幼虫は水中、成虫は周りの草地や樹林で暮らす生き物もいます。水の上と下、幼虫と成虫を合わせて考えると、草との関わりも広がります。

水草の生き物の観察は、水面の線を一本引いて暮らす場所を書く

ハグロトンボの暮らしを、紙の上で整理してみませんか。水面を表す線を一本引き、その下に「幼虫は水草につかまる」と書きます。岸の上の側には「成虫は草地や樹林などで暮らす」と書いてみましょう。

虫や植物を上手に描く必要はありません。同じトンボが、水中と陸上で違う場所を使うことが分かれば十分です。

水草や岸の草には、生き物が暮らす場所と、そこでの動作が重なっています。草のそばにいる小さな姿を知りたくなったら、「何という生き物か」に加えて、「植物とどう関わっているか」も、面白い調べものになります。