魚は寝るの?目を開けたまま眠る魚と、睡眠研究で分かったこと

水草のそばに、あまり動かない魚がいます。目はぱっちり開いたまま。「眠くならないのかな」と思うと、ほかの魚の目も気になってきます。
魚にも睡眠があります。ゼブラフィッシュなど、まぶたのない魚は目を開けたまま眠ります。 ただし、「目が開いている」「動かない」という見た目だけで、起きているか眠っているかは決められません。研究では、行動に加え、脳や体の活動も調べています。
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目を閉じない魚がいるのは、まぶたがないから
私たちは眠るとき、ふつうはまぶたを閉じます。その姿を見慣れていると、目が開いている魚は、ずっと起きているように感じます。
ところが、淡水魚のゼブラフィッシュにはまぶたがありません。眠るときも、人と同じように目を閉じることはできないのです。目を閉じることと、眠ることは同じではありません。
魚をすべて「目を閉じない動物」とまとめるのも正確ではありません。2022年のサメの一種を調べた研究では、睡眠中に目を閉じる場合も、開いている場合も記録されました。目を閉じているかどうかより、体の姿勢や代謝の変化のほうが、眠りを知る手がかりになりました。詳しくはKellyらによるサメの睡眠研究(英語PDF)で報告されています。
じっとしている魚は、みんな寝ている?
目が目印にならないなら、動きを見れば分かるのでしょうか。動きが少ないことは手がかりになりますが、それだけでは足りません。人も、静かに座っている間ずっと眠っているわけではありませんね。
米国海洋大気庁(NOAA)の解説では、魚が活動や代謝を下げて休むことや、その場にとどまる、隙間に入るなど、休み方に違いがあることが紹介されています。ここでいう代謝とは、体の中でエネルギーを使うなどの働きです。
では、ただ静かにしている状態と、睡眠をどう分けるのでしょう。ゼブラフィッシュの睡眠研究では、動かない時間に加え、刺激に対して反応しにくくなることや、眠れなかった後に睡眠が増えることなども手がかりにしてきました。
一つの姿だけを見るのではなく、前後でどう変わるか、いくつもの特徴がそろうかを調べるのです。これは、研究のために条件を整えて確かめる話です。水槽をたたいたり光を当てたりして、魚が起きるか試す必要はありません。
川底にいる魚が気になるときは、その魚の暮らしも関わります。川底にじっとしている魚の体の形と暮らしでは、底を使う魚の具体例を紹介しています。
小さなゼブラフィッシュの脳にも、二つの眠りの特徴
眠りを知る研究は、外から見える動きのさらに内側へ進んでいます。2019年、研究者たちは、生まれて間もないゼブラフィッシュを使い、眠っているときの脳や体の活動を調べました。
透明な体を持つ幼い魚に、神経の活動を光で捉える方法を用いました。脳全体の活動とともに、眼球の動き、筋肉、心拍も測定しています。見た目には静かでも、体の中がどう変わっているかを比べられるようにしたのです。
そこで見つかったのが、二つの異なる睡眠の特徴です。一つは、脳の一部で神経細胞がまとまって活動し、静まることをゆっくり繰り返す状態。もう一つは、神経の活動が波のように伝わる過程を伴う状態でした。それぞれ、哺乳類の「徐波睡眠(じょはすいみん)」と「レム睡眠」に似た点があると報告されています。
興味深いのは、レム睡眠に似た特徴があっても、人のレム睡眠に見られるような素早い眼球運動は確認されなかったことです。名前や見た目をそのまま当てはめるのではなく、脳と体のどこが似て、どこが違うかを調べています。スタンフォード大学の研究紹介(英語)でも、この発見が説明されています。
この研究は、実験条件のもとで幼いゼブラフィッシュを測定したものです。すべての魚が、人とまったく同じ眠り方をするという意味ではありません。それでも、魚の眠りが「動かない時間」という見た目を越えて、脳の働きとしても調べられることが分かりました。
魚も夢を見るの?似た眠りと、まだ分からないこと
レム睡眠に似た状態があると聞くと、「魚も夢を見るのかな」と想像したくなります。けれども、脳や筋肉の活動に共通点があることと、夢を体験していることは別です。今紹介した研究だけで、魚が夢を見ているとは判断できません。
また、眠る時刻や休み方を、魚全体で一つに決めることもできません。研究によく使われるゼブラフィッシュは昼に活動する魚ですが、夜に活動する魚もいます。昼間の水槽で静かにしている姿を見たときも、その種類の一日の暮らしを知ると、考えられることが増えます。
目の前の魚にも、見た目だけでは分からない時間がある
水草のそばで静かにしていた魚も、目が開いているという理由だけで、起きているとは決められません。その姿をすぐに「寝ている」と名づけなくても、魚にも眠りがあると知るだけで、水槽の見え方が少し変わります。
次に展示を見るときは、解説に「昼に活動する」「夜に活動する」といった言葉があるか、目を向けてみてください。展示を見ている時間の外にも、その魚の暮らしが続いていることに気づけます。
じっと見える魚の、胸のそばの小さな動きも気になったら、魚のひれにはどんな役割がある?へ。場所が変わらない間にも働く体のつくりを、今度は外側から見ていけます。

